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「男」という不安
「男」という不安 を読みました。結論をあえて出さない懐深さをちらつかせる男の理屈(政治っぽい?)が延々と述べられていると感じました。彼の分かりきっているというスタンスで中道を行く部分に抵抗があったのかな。ボタンの賭け違いというか、文章との呼吸が合わなくて窮屈な本という印象でした。著者は「男」という確固としたものを持っているのだろう。主題ではないがその中で「一人前の男になる過程」を現代の社会的条件を理解して述べている。以下はその部分の引用
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農業漁業などの第一次産業が主力であった時代には自然の「モノ」を相手にし、それらをいかに人間の役に立つものとするかという実用的な「力」や「技術」の習得が、男を一人前にする最重要の条件だった。

製造業を主流とする第二次産業の時代でも、このことは基本的に変わらない。零細企業の職人の世界には、親方と師弟の関係を通して技術を伝授するという「一人前化」の仕組みがあった。また、近代的な大工場も、優れた製品を作り上げることによって支えられており、そこに参加する圧倒的多数の若者にとって、モノづくりのスキルを身につけることが、社会的な成長の条件だった。
中略
サービスを売ることを主目的とする第三次産業の社会では、「労働」の意味が質的に違ってくる。それは、「モノ」を直接の相手にするのではなく、むしろ「モノ」を介しつつ「人」を相手とする。顧客をいかに獲得するか、作られた製品にいかに他とは異なる付加価値をつけてみせるかといったことに、大きなエネルギーが割かれのである。
中略
「人の心」ほどつかみ所のはっきりしないものはない。それは、投じた労働に対する具体的な手ごたえの感覚を、個人の身体に返さない。それは、目に見える「収穫」でもなく「製品」でもない。相手の反応がこちらに確信を持って与えられるということが少ない分だけ、自分の労働そのものに対する不安を呼び起こすだろう。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・長々と引用したけど、正確に時代を捉えていると思う。身体的に手ごたえのない感覚からくる不安なんてその通りだろう。しかしながら、なぜ現代をこんなに理解しているのに「一人前の男になる条件」が掲げられるのか分からない。「サービスを売ることを主目的とする第三次産業の社会」の仕組みには、「性差」は存在しないことを理解できないのかな?現代で「一人前の男」を取り上げられる意味がやっぱり理解できなかった。

今を生きる私たちには歴史があってその呪縛は確かに存在する。それが性差に起因していたのは否定できず、それを理解して性差がなくなった現代を社会的にいかに理解するかに意味がある。ただ、社会は引きずられるので革命的な変化とはならない。

男の子は生まれたときから大人になって家族を支えるために働くという選択肢を持ち、女の子はお嫁さんという選択肢が前段にあってその次に働くという選択肢を持つ。これは社会的な事実として今でも存在し、意識するしないにかかわらす決定的な要因であった。もちろん今でもその名残はある。そうでない人も出てきたかもしれないが社会は暗黙として肯定はしていない。仕方ないとだけ思っている。

男は、さっさと選択肢がない自分をあきらめて、だからこそ過去を振り返り現状を悩む。

女は、いずれかの道を選択肢した後、途方もない道のりを想像して現状を悩む。
by ssnostalgia | 2004-09-01 20:54 | book
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