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人類と建築の歴史
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藤森照信

人類の歴史を建築の歴史に重ね合わせ、「建築」として表現されたもに人間のすべてが現れていると語る。ここで筆者が言う「建築」とは、内部空間があって外部空間があるモノを指し示すが、ものすごく複雑なことを「建築」という言葉で簡単に要約している。内部空間、外部空間はそれぞれ、地母信仰(母性的)と太陽信仰(父性的)の表れだと、人間が生きるために必要であった二つの信仰をもとに「建築」の始まりを語る。

人間の歴史は、旧石器時代から新石器時代に大きく変化した。新石器=磨製石器を使うことで打製石器では不可能だった森を切り開き家を作ることを可能にした。旧石器時代の狩猟採集の非定住型の生活から、森を切り開き、家を作り、モノを貯蔵し、定住する生活をはじめる。定住することで様々なものが可能となった。

1つは老人の知識である。非定住の社会では動き続けることが前提だから、年を重ね動けなくなる老人は足手まといであった。しかし、定住することで老人も大事にされる社会になった。老人が大切にされる社会は、知識を体系立てて蓄えることもできるようになり、社会としての熟成も可能となった。

2つ目が農業である。定住することで農業を始めることができるのだが、人口増加を獲得し、拡大経済が始まる。農業の始まりに対する著者の記述は的を得ていると思うので長いが引用。

「おそらく、狩をする男性の方が採集する女性よりえらい、と思われていた。しかし、人類史上最大の発見とも言うべき農業は、日頃から芋を掘ったり草のみを拾い集めていた、えらくはないお母さんが発見することになるのである。

中略

お母さんが農業を発見できた理由は、もちろん第一には常日頃から植物に接し生態に詳しかったからだが、それだけではなかったと私はにらんでいる。すでに述べたように農耕開始以前から大地の動植物の恵みに感謝し、その豊産を祈る地母信仰が発達していた。人間の多産、安産への祈りがその中心にあった。地母信仰は生命を生み出す力への信仰であった。

お母さんは、野生の植物の生育を手助けしているとき、植物の種から芽が出て葉を伸ばし、花を咲かせて、やがて実を結ぶ、そういう過程を、とりわけ自分が妊娠している時の自分の胎内の子の動きと合わせて、お父さんにはとてもできないほどことこまやかに観察し理解していた。植物の気持ちになることができた。いってしまえば、植物に入り込んで内在的に理解していた。

農業の一番の秘密は、種をまくことだが、きっと、女性は自分の身体に種がまかれること(性交・妊娠)を通して、生命出現の有様を正しく深く理解することができたに違いない。人間の種をまくのは男性だが、男性は今も昔もやりっぱなしの場合が多く、そんな者が生命の神秘に迫るのはむずかしい。」

痛く痒い指摘は最もである。

結果として地母信仰(=豊穣を願う心:女性)が農耕を手に入れることになるが、農耕を手に入れた人類は、必然的に太陽信仰を作り出すことになる。大地に根付く植物は太陽からの光をエネルギーとして成長する。そのため地母信仰が生み出した農耕は太陽を必要とし、必要とする心が太陽信仰を生み出す。信仰は擬人化され、太陽信仰を男性が司り、地母信仰を女性が司ることによって、この二つは一対となる。

形態に表される地母信仰と太陽信仰はそれぞれ「内部空間」と「外部空間」ということになる。理由として、前者は、人間の豊穣を表す「出産」を考えることで説明される。外部から無防備な状態から守る具体的理由や出産の儀式化から、洞窟など内部で執り行われて進化し、内部空間化していき、後者は、太陽を含めた自然との対峙により、必然的に外部での垂直性に向かっていく意味を持たせられた外部空間(ファサード)といえる。

筆者が述べる「建築」は地母信仰と太陽信仰が一体化したものであり、それをを起源として世界にひろまっていく。内外部を一体としてはじまった「建築」が広まっていく過程の説明があり、6段階に「人間の歴史」=「建築の歴史」をきざんでいる。

1段階は、「新石器」でこのときは世界は1つであった。
2段階は、「四大文明」で地域の風土の特性に合わせて進化していく。
3段階は、「四大宗教」で観念が物質に特徴を付け始め細分化を進める。
4段階は、「大航海時代」でアメリカ・アフリカでの淘汰がはじまる。
5段階は、「産業革命」でアジアの淘汰も終わり、固有性は衰退する。
6段階は、モダニズムが世界を染め、結果、世界は1つになった。

全てが西洋化することで西洋自体もその固有性を失い、「1万年をかけて、再び世界は1つになった。」また、「その結果としてさらに物質がもつ固有性を消すため、透明性を求めたデザインが主流になっている」との結びであった。

世界が1つになったのは事実だから仕方がない。ただ1つ言える事は、『1つになった世界』はかつて『1つであった世界』と違うということであり、その違いの根底には、太陽信仰もなければ地母信仰もない。一言付け加えると、男性観も女性観もやはり大きな意味をもたない。本書は人間史の名著だとおもう。

追:モハメッドのコーラン、キリストの聖書、孔子の論語、釈迦の法典は、それぞれ、イスラム教、キリスト教、儒教、仏教と対応するが、これら太陽信仰が進化したものと考えられる「観念」が地母信仰が生み出した土着の神を駆逐していく指摘が興味深く、それらを建築表現に絡めた点も面白かった。

写真は藤森さん設計の高過庵
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by ssnostalgia | 2005-07-27 12:50 | book
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