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Million Dollar Baby
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とある日、ボクシングの試合を観戦する女性(ヒラリー・スワンク)がいた。映画はこのシーンから始まる。血を噴き出し負けかけていたボクサーにアドバイスを与え、勝利に導いたトレーナー(クリント・イーストウッド)に彼女は惚れこむ。30歳を過ぎていたがボクシングジムに通い、抱き続けていた夢を追い求める。
「ミリオンダラー・ベイビー」

貧困層出身の女性が主役。彼女は大好きな父と幼い頃に死別し、それまでの思い出を大切にして生きている。父以外の家族は、母も兄も妹も、希望を失った人間として描かれている。父の死というハンデ、つまりは逆境に、彼らは負けてしまっていた。

母や兄や妹の心情を理解出来るからこそ、それに染まりたくない彼女は、一人家族から離れ、希望を捨てずに毎日を強く生きる。生活は貧しく、日銭を稼ぐ思いでウエイトレスとして働いていた。救いようのない状況はどこにでも存在して、貧困層出身で14歳から働く彼女には学歴もない。さらには、女性=弱者の立場が当たり前の片田舎の社会である。

平等でない社会は誰もが感じるが、そのハンデを乗り越え、先を考える事が生きる希望を生む。彼女が選んだ道はボクシングだった。

体重制限で階級を分けて戦うスポーツは参加するものには対等な競技で、どんな立場を引き摺って生きてきてもリングに立てば同じ条件で戦うことになる。言い訳が許されない状況こそが、尊厳に尊厳としての意味を与える。勝者は敗者の尊厳を奪うことで、また、敗者は勝者に尊厳を与えることで、それぞれの尊厳を守る。大切なことだろう。

ボクサーのスタートとしては高齢ではあったが、生きることを強く意識する彼女のひたむきさとトレーナーの才能、さらにはトレーナーを強く信じきることで、ボクサーとしての力を身につけていく。

彼女とトレーナーの関係には狭義の意味で人間性はなく、言われたことに対して「Yes」と応えることだけが、彼女がトレーナーと交わした契約であり約束であった。命じられたことに対して質問さえも許されない。教える側と教わる側の立場を明確にする表現は、師弟という完全な住み分けがなくなってきた昨今には珍しい関係を表現していたが、この映画では大きな意味を持つ。

トレーナーと選手は対等な立場に立ち、お互いの尊厳を認めながら関係を築いていくのだと考えていたが、監督は絶対にそう語ってはいない。むしろ、選手はトレーナーの一部で血であり、肉体であり、自分自身であると述べる。

トレーナーの比較としてマネージャーが引き合いに出されるが、この比較を理解することがこの映画の主題=尊厳を理解することになる。

マネージャーがトレーナーと絶対的に異なるのは、ボクシングの試合でタオルを投げる権利を持つのはマネージャーだけだと言う。マネージャーは選手を所有するからで、所有という経済関係の先に尊厳は生まれない。

タオルを投げることが意味するのは、尊厳を賭けて戦う選手の尊厳を無視する形となるし、選手の尊厳を奪うことを意味する。選手自身が負けを認めた場合は、倒れればいいし、負けたくないと尊厳を賭けて戦っている状況は選手の判断である。
(誰もが所有されることは望まないが、所有の区分に入ると尊厳は確保できない。子どもは大人の所有物ではない。)

トレーナーとしてかつて一緒に戦っていたボクサー(モーガン・フリーマン)がいた。彼はある試合で失明をするが、その回想シーンが語られる。リングサイドにはマネージャーが不在であったが、ボクサーとトレーナーだけで試合に挑む。その試合でボクサーは目の上に大きな傷を受け戦える状況ではなかった。本来ならタオルを投げる状況であるが、マネージャーは不在なのである。

形式的にトレーナーがタオルを投げ入れれば良いのであるが、それをしない美学がこの映画の中で人間尊厳を語る。トレーナーは止血を繰り返し、ボクサーをリングに何度も送り出す。倒れずに勝ちたい一身で戦うボクサーの尊厳を認めるトレーナーは、彼と一心同体であったのだろう。結果としてボクサーは失明をするが、彼の尊厳を認めた先の出来事でボクサーが選んだ道なのである。

映画結末、同じように、我々に尊厳を問いかける。試合中の事故で不幸にも思うように身体が動かなくなった彼女は、何度となく死を望み、自殺を繰り返す。積極的に死を望むが、精一杯生きたので後悔はしていない。むしろ、100万ドルを賭けて戦った自分を誇らしげに思っている。心から死を願う彼女の生き方は、精一杯尊厳を賭けて生きてきたことの裏返しである。

積極的死が意味を持つのは尊厳を賭けて良く生きてきた上に成り立つからで、身体の自由を奪われた彼女の変わりに、尊厳をかけて共に生きたトレーナーが自殺を幇助する。

彼女のリングコスチューム=ガウンにはゲール語で「Mo cuishle」と書かれている。トレーナーが彼女を思う気持ちがその言葉に込められている。映画ではこの言葉の意味は伏せられていたが、彼女の死に際に語られる。「I love you. My darling. My blood」。そしてエンディング。。。。

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1・人間尊厳をテーマに、ギリギリまで人間の在り方を問いかける映画は、今年一番の映画だと思う。

2・「ホワイト・オランダー」が扱う親子関係に似ていたが、血縁を超えた関係を描いていたためか、こちらに普遍性を感じる。

3・美しい響きのゲール語「Mo cuishle」、その訳をGaelic - English Dictionaryなどで探しましたが、見つかりませんでした。映画では硬~い言葉で訳されていたので、、、

4・クリントイーストウッドとモーガンフリーマンのやり取りが人間を凝縮していて秀逸。裏切りも信頼もすべては人間関係が作り出している。

5・ヒラリー・スワンクは劇場で観た「ボーイズ・ドント・クライ」以来ですが、今回の方がはまり役だと感じる。強い意志を際立たせる「笑顔」が素晴らしい女優さんだと思う。

6・良い映画に出会えると、生きていて良かったと心から思う。
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by ssnostalgia | 2005-06-13 12:15 | movie
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